こんにちは、現役医師のこんどすです!
DPE(Dural Puncture Epidural)はいったい何Gなら効果があるのか?
最近の研究ではDPEは25Gで行うのが主流です。
いつから27Gでは効果がないことになったのか?
今回の記事を読めば、DPEは27Gでは効果がなさそうだとういことがわかります。
僕自身は27Gでも効果を感じていますが、あくまで個人の感想です😂
DPEがイマイチわかないよって人は下のメモを参考にしてください。
DPEとは?
CSEA(脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔)と似ていますが、脊麻針で硬膜穿刺後、脊髄くも膜下に薬液を入れずに、穴を空けるだけのテクニックです。
その後、硬膜外麻酔を行うと、その空けた穴から薬液がわずかに脊髄くも膜下に流入し、硬膜外麻酔単独(EA)では得られない効果を得ることができます。
主な効果は、EAより鎮痛のオンセットが早くなり、鎮痛の質(片効きの減少、S領域の鎮痛効果など)がアップすることです。
EAと合併症の頻度は同等で、穴を空けるデメリットはありません。そしてCSEAに見られる胎児一過性徐脈や掻痒などの合併症の頻度が低いです。
鎮痛のオンセットが早い
鎮痛の質がアップする
合併症が少ない
まさに、硬膜外麻酔単独の上位互換といえる画期的な方法ではないでしょうか?
DPEに関してはこちらの記事のも参考にしてみてください。
論文紹介記事のコンセプトについては第1回の記事をご確認ください。
今回紹介する論文はこちらです。
Dural puncture with a 27-gauge Whitacre needle as part of a combined spinal-epidural technique does not improve labor epidural catheter function
27GWhitacre針によるDPEは硬膜外カテーテルの機能を改善しない。
John A Thomas, Peter H Pan, Lynne C Harris, Medge D Owen, Robert D’Angelo
Anesthesiology. 2005 Nov;103(5):1046-51.
原文リンクはこちら。
一緒に学んでいきましょう!
アブストラクト(一部本文より追加)
背景
- 27GWhitacre針によるDPEが従来のEAと比べて硬膜外カテーテルの機能を向上するかの研究
- CSF(脳脊髄液)を確認することでより正中にカテを留置できる可能性がある
- 硬膜の穴から薬液が脊髄くも膜下に流入することにより鎮痛の質が改善する可能性がある
- 過去の研究より硬膜外カテーテルの調整率は最大44%、留置失敗率12-13%
- 過去の研究より帝王切開時にカーテルが使えなかった割合が7.1-10.5%
方法
251人の健康な妊婦をランダムに割り付けた
- DP群(DPE) 27GWhitacre針によるDPE
- NoDP群(EA) 従来どおりの硬膜外麻酔単独
- 硬膜外カテーテル挿入後に2%リドカイン2mlでテストドーズ(脊髄くも膜下投与でないテスト)
- さらに2%リドカイン5mlでテストドーズ(静脈投与を否定するための)
- 2回のテストドーズが終わったあとにさらに2%リドカイン3mlを投与してトップアップ
- ここまでで2%キシロカイン合計10ml
- 維持はCEI(持続投与)で0.11%ブピバカイン+フェンタニル2μg/mlを10ml/h、PCEA5ml/LT10min
- 必要時には0.25%ブピバカイン5mlずつ追加でトップアップ
- それでも効果不良の場合はカテーテルを1−2cm引き抜き、0.25%ブピバカイン5mlを追加投与(最大10mlまで)
- それでも改善しない場合は、カテーテルを再留置
2%キシロカイン10mlはとても濃いし高用量だよ。
結果
- 分娩様式:分娩様式、オキシトシンの使用率、無痛分娩時間など
- 合併症:カテーテルの静脈内留置(6−10.3%)、偶発的硬膜穿刺(0.8−1.6%)など
- 鎮痛の質:カテーテル再留置(0.8−1.6%)、カテーテル調整率(28−37.4%)、片効き(20.6−30%)、S領域の鎮痛不良(25−29.9%)、追加のトップアップ必要回数(1.7−1.8回)、維持に使用した局麻の時間あたりの総量(15.9−16.2ml)など
①〜③のような硬膜外カテーテルの調整率と再挿入率、S領域の鎮痛不良、片効き、追加トップアップの回数、時間あたりの薬液使用量、麻酔レベル、鎮痛の質、分娩様式などはそれぞれグループ間で有意差がなかった
そして
硬膜穿刺後にCSFの逆流がなかった18人はカテーテル再挿入率が高かった
多くのDPEの論文で示された効果は、27GのDPEでは効果がなかったみたい
結論
- 27GWhitacreのDPEは従来のEAと比べて、鎮痛の質を改善しなかったし、カテーテル操作や再挿入率を減らさなかった
- CSFの流出がなかったときは、カテーテルが適切に留置されていない可能性がある
脊麻針のCSFの流出確認は、正中に穿刺できた(できてそう)ことを確認できるテクニックなので、ぜひ覚えておきましょう!
まとめ
DPEの効果は硬膜穿刺する針のサイズに関係します。
そのため他の論文で示されているように25Gでは効果があっても、27Gでは効果がないようです。
この論文以降、DPEに関する研究は25Gを使用することが多いです。
日本でよく使用されているB.Braun(ビー・ブラウン)やSmiths Medical(スミスメディカル)の脊硬麻キットに入っている脊麻針は27Gのペンシルポイントなので
キット内に入っている脊麻針をそのまま使用してもDPEの効果は得られないということになります。
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
DPEが新しいスタンダードになるでしょう!