論文紹介

【第13回】産後尿閉(PUR)の頻度とリスクファクター

【第13回】産後尿閉(PUR)の頻度とリスクファクター こんどす

こんにちは、現役医師のこんどすです!

先日、無痛分娩をした患者さんが、産後に明らかな尿閉になってしまいました。

産後だいたい30時間ほどで軽快しましたが、それまでは導尿が必要でした。

尿閉は患者さんのQOLや満足度を低下させる原因になります。

残尿感があって不快だわ
毎回導尿されるのもいやだし

そこで今回の記事では、産後の尿閉の頻度やリスクについて最新のシステマティックレビュー&メタアナリシスを紹介します。

今回の記事でわかること
  • 産後尿閉には2種類ある
  • 産後尿閉の頻度
  • 産後尿閉のリスクファクター
こんどす

合併症への理解を深めてしっかりケアしていこう!

今回紹介する論文はこちらです。

タイトル・著者・雑誌名
  • The risk factors of postpartum urinary retention after vaginal delivery: A systematic review
  • 経膣分娩後の産後尿閉のリスクファクター:システマティックレビュー
  • Qiaomeng Li, Shening Zhu, Xiao Xiao
  • Int J Nurs Sci. 2020 Sep 15;7(4):484-492.
  • PubMedリンクはこちら

アブストラクト(一部本文より追加)

背景

経膣分娩後の産後尿閉PUR:Postpartum Urinary Retention)の独立したリスクファクターを調査した

方法

11個のデータベースからシステマティックレビューとメタアナリシスを取得した

結果

合計9つの記事から5つのリスクファクターが特定された

産後尿閉のリスクファクター
  1. 会陰切開(OR = 2.99, 95%CI = 1.31-6.79, P = 0.009)
  2. 硬膜外麻酔(OR = 2.48, 95%CI = 1.09-5.68, P = 0.03)
  3. 初産(OR = 2.17, 95%CI = 1.06-4.46, P = 0.03)
  4. 器械分娩(OR = 4.01, 95%CI = 1.97-8.18, P < 0.001)
  5. より長い分娩2期(MD = 15.24, 95%CI = 11.20-19.28, P < 0.001)

3800gを超える巨大児はリスクファクターではなかった(MD = 64.41, 95%CI = -12.59 to 141.41, P = 0.10)

こんどす

それぞれの要素が互いに関連しているよ。
例えば、初産の無痛分娩で、分娩2期が遷延して、器械分娩(当然会陰切開)っていうパターンはよく見かけるよね。

頻度については、かなり幅があり参考程度です。

産後尿閉 Postpartum Urinary Retention:PUR にはOvertとCovertの2種類あります。

Overt:顕在性の明らかな尿閉。
Covert:潜在性の尿閉。排尿後の残尿量≧150ml

PURの頻度
クリックで拡大できます

両者を含めるかどうかでばらつきがより強くなります。おおよそ顕在性のものが0.3-3.85%、潜在性のものが3.85-47%となります。

結論

PURの独立した5つリスクファクターが見つかった


まとめ

PURには2種類あることがわかりました。

潜在性のものを含めるとかなりの割合になりますが、カットオフ値を150mlから500mlにしたほうがいいという指摘もあるようで議論が必要です。実際に治療を必要とするCovertの尿閉は少ないので、今後定義が変わる可能性もありそうです。(潜在性の尿閉を見つけても意味ない)

無痛分娩の有無に関わらず、5つのリスクファクターに該当する産婦さん(特に初産婦)には産後に尿閉になっていないかチェックしてケアしていきましょう!

以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊

こんどす

産後のケアが大事!

これまでに紹介した合併症についてはこちらも参考にしてみてください。

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