こんにちは、現役医師のこんどすです!
今回は産後の神経障害についての記事です。
例えば、無痛分娩後に神経障害が出ると、原因として真っ先に麻酔が疑われがちですが
実は、麻酔よりも分娩そのものが原因なることが多いんです。
そしてその頻度はなんと約100人に1人の確率です。
患者さんが訴えていないだけで、見逃してしまっている例もあるのかもしれませんね。
論文紹介の趣旨については第1回の記事をご確認ください。
今回紹介する論文はこちらです。
Incidence of postpartum lumbosacral spine and lower extremity nerve injuries
産後の腰仙骨神経叢と下肢の神経障害の発生率
Cynthia A Wong, Barbara M Scavone, Sheila Dugan, Joanne C Smith, Heidi Prather, Jeanne N Ganchiff, Robert J McCarthy
Obstet Gynecol. 2003 Feb;101(2):279-88.
原文リンクはこちら。
産後の神経障害の頻度は以前の報告よりも多かった。
リスク因子として初産婦と分娩第2期の遷延があった。
という内容です。
では、さっそく確認していきましょう!
急ぎの方は、目次の結果からどうぞ!
一緒に学んでいきましょう!
アブストラクト
目的
- 分娩と関連する神経障害はまれ(0.008%-0.5%)だと考えられていた
- 神経障害の発生率、重症度、持続期間を推定し、関連因子を特定する
方法
- 1997年7月〜1998年6月に出産したすべての女性に、出産翌日の神経障害の症状について尋ねた
- リハビリテーション医が診察し、症状が消失するまで電話で追跡調査した
- 神経障害に関連しそうな母体と胎児の変数を比較した
結果
- 6057人のうち6048人にインタビューを行った
- 対象は自然経腟分娩、無痛分娩、帝王切開、流産、死産を含むすべての分娩
- 6048人のうち56人に神経障害が認められた
- 発生率0.92%
- 外側大腿皮神経:片側22 両側2
- 大腿神経(感覚神経のみ):片側8
- 大腿神経(感覚神経と運動神経):片側13 両側1
- 総腓骨神経:片側3
- 腰仙骨神経叢:片側3
- 坐骨神経:片側2
- 閉鎖神経:片側3
- 神経根障害(L4/L5/S1領域):片側5
- その他:片側1
- 合計21名に運動障害を認めた(0.37%)
外側大腿皮神経や大腿神経は鼠径部を通る神経だよ
- 分娩第2期の遷延
(P=0.001) - 初産婦
(P=0.001)
ただし区域麻酔の有無は有意差なしでリスクにならない
麻酔そのものはリスクにはならないようだけど・・・
- 神経障害の女性の方がセミファーラー砕石位(いわゆる分娩体位)での努責時間が長かった
- 神経障害群は、努責開始時の児頭が高い、努責時間が長い、分娩第2期が長い、の3つの因子は相関していた
長時間の分娩体位は要注意!
- 中央値2ヶ月(1週間〜18ヶ月以上)
- 72時間以内に消失することが多い
結論
- 産後の神経障害の頻度は0.92%だった
- 産後の神経障害のリスクは初産婦と分娩第2期の遷延だった
まとめ
ここからは僕個人の意見や感想です。
産後の神経障害の頻度0.92%は、約100人に1人でかなり多い数字ですよね。分娩件数の多い施設では月に1人以上いることになります。
無痛分娩について言うと
脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔などの麻酔そのものはリスクにならずとも
無痛分娩により分娩2期の延長や器械分娩の増加がすることを考えると
間接的にリスクになっているため注意が必要です。
特に、麻酔中は下肢の神経症状がマスクされてしまいます。
ずばり、予防策といえば
こまめな体位変換や下肢の運動を心がけていくしかありません!
そして最後に、合併症として神経障害が出てしまったときは
丁寧な説明や対応と、しっかりフォローしていく姿勢が何よりも大事だと思います!
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
産後の回診でしっかりフォロー!退院後も相談乗ります!
これまでに紹介した合併症についてはこちらも参考にしてみてください。