こんにちは、現役医師のこんどすです!
2021年8月30日付けでグラニセトロンとオンダンセトロンの術後悪心嘔吐(PONV:PostOperative Nausea and Vomiting)に対する保険適応が厚生労働省より認可されましたね!
そこで、PONV予防ガイドラインについて確認しておこうと思った人はいませんか?
今回の記事を読めば、
最新のガイドラインに沿ったマルチモーダルPONV予防ついて確認できます!
リスク評価→基本対策→制吐剤の多剤併用予防投与→レスキュー
この流れをしっかり理解しておきましょう!
マルチモーダルとは?
作用機序の異なる複数の方法を組み合わせて多角的にアプローチする方法。
1つの方法で行うより強力な効果が得られる。一方で、複数の方法のそれぞれのデメリットを抑えることができる。医療以外でも使われる用語。麻酔科界隈ではよくマルチモーダル鎮痛という言葉が使われる。
論文紹介記事のコンセプトについては第1回の記事をご確認ください。
最後に、僕のおすすめの方法も紹介します!
今回紹介するガイドラインはこちらです。
Fourth Consensus Guidelines for the Management of Postoperative Nausea and Vomiting
第4回PONVコンセンサスガイドライン
Tong J Gan, Kumar G Belani, Sergio Bergese, Frances Chung, Pierre Diemunsch, Ashraf S Habib, Zhaosheng Jin, Anthony L Kovac, Tricia A Meyer, Richard D Urman, Christian C Apfel, Sabry Ayad, Linda Beagley, Keith Candiotti, Marina Englesakis, Traci L Hedrick, Peter Kranke, Samuel Lee, Daniel Lipman, Harold S Minkowitz, John Morton, Beverly K Philip
Anesth Analg . 2020 Aug;131(2):411-448. doi:10.1213/ANE.0000000000004833.
原文リンクはこちら。
2020年に更新された最新版です!一緒に学んでいきましょう!
ガイドライン
今回は、大事な2つのアルゴリズムを厳選して説明します。
背景
- PONVは術後の合併症として最も一般的で発生率は30%
- PONVは苦痛な経験で患者の不満につながる
- PONVは入院期間の延長や医療費の増加に関連する
成人のPONV管理アルゴリズム
- 女性
- 若年<50歳
- 非喫煙者
- 術式(腹腔鏡手術、肥満手術、婦人科手術、胆嚢摘出術)
- PONV歴/乗り物酔い
- オピオイド鎮痛(術後オピオイド含む)
- 笑気、吸入麻酔薬、高用量のネオスチグミンの使用を避ける
- 区域麻酔を考慮する(全身麻酔を避ける)
- マルチモーダル鎮痛でオピオイドを減らす(ERAS)
- リスク因子=1-2個→2剤併用
- リスク因子≧3個→3-4剤併用
- 5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン0.35-3mg iv 手術終了時、オンダンセトロン4mg iv 手術終了時)
- 抗ヒスタミン剤
- プロポフォール麻酔(TIVA)
- 鍼治療
- コルチコステロイド(デキサメタゾン4-8mg iv 麻酔導入時、メチルプレドニゾロン40mg iv)
- ドパミン拮抗薬(ドロペリドール0.625mg iv 手術終了時、ハロペリドール0.5-2mg iv、メトクロプラミド10mg)
- NK1受容体拮抗薬
- 抗コリン薬
カッコ内は日本のオペ室で一般的に使用できる範囲で点滴薬のみ記載しました。
基本的に、予防投与で使った薬と異なるタイプの制吐剤を投与する
(6時間以上経過していて、他に手段がない場合は、5HT-3受容体拮抗薬の反復投与を考慮してもよい)
リスク評価→基本対策→制吐剤の多剤併用予防投与→レスキューの流れ!
小児のPONV管理アルゴリズム
術前
- 年齢≧3歳
- PONV歴/乗り物酔い
- 家族歴思
- 春期後の女児
術中
- 斜視手術
- アデノイド扁桃摘出術
- 耳介形成術
- 手術時間≧30分
- 吸入麻酔薬
- 抗コリンエステラーゼ
術後
- 長時間作用型オピオイド
- リスク因子=0 低リスク
- リスク因子=1-2 中リスク
- リスク因子≧3 高リスク
- 低リスク なし or 5HT-3受容体拮抗薬 or デキサメタゾン
- 中リスク 5HT-3受容体拮抗薬 + デキサメタゾン
- 高リスク 5HT-3受容体拮抗薬 + デキサメタゾン + TIVA
基本的に、予防投与で使った薬と異なるタイプの制吐剤を投与する
ドロペリドール、プロメタジン、ジメンヒドリナート、メトクロプラミド
さらに鍼治療やツボ治療も考慮
成人と流れは一緒だよ!
まとめ
2枚のアルゴリズムを参考にリスク評価→基本対策→制吐剤の多剤併用予防投与→レスキューの流れをマスターして実践しよう!
日本国内で現実的に行えるおすすめの方法は
術前デキサメタゾン3.3mg or 4.95mg or 6.6mg
術後ドロペリドール0.625mg
の2剤併用を軸に
術中TIVA管理(プロポフォール)
術後5-HT3 受容体拮抗薬(〜セトロン系どちらかオンダンセトロン4mg or グラニセトロン1mg)をドロペリドールと一緒に投与
で、最大4剤併用療法が一番手っ取り早いかなと思います。
TIVAに関してはレミマゾラムも吸入麻酔薬よりはいいかもしれませんね(いちおう少量のミダゾラムに制吐作用があるとのこと)
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
PONV対策は費用対効果も高いことが実証されているよ!
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