こんにちは、現役医師のこんどすです!
無痛分娩を提供しているみなさん
麻酔導入後の麻酔維持はどの方法で行っていますか?
麻酔の維持方法は、持続的に投与する方法(CEI)と間欠的に投与する方法(PIEB)の2通りあると説明しました。
例えば、CEIを10ml/hで行うのと、PIEBを5ml/30分毎で行うのは
1時間あたりの薬液の投与量はどちらも10mlで同じになります。
しかし、薬液を注入するときに、ある程度の注入圧がかかると
硬膜外腔での薬の広がりが大きくなり、麻酔効果範囲が広がると言われています。
つまりPIEBの方が、効率的に麻酔レベルを維持できるわけです!
今回の記事を読めば、麻酔の維持はどの方法が優れているのかがわかります!
論文紹介記事のコンセプトについては第1回の記事をご確認ください。
今回紹介する論文はこちらです。
Automated mandatory bolus versus basal infusion for maintenance of epidural analgesia in labour
麻酔維持について;自動間欠ボーラスvs持続投与
Ban Leong Sng, Yanzhi Zeng, Nurun Nisa A de Souza, Wan Ling Leong, Ting Ting Oh, Fahad Javaid Siddiqui, Pryseley N Assam, Nian-Lin R Han, Edwin Sy Chan, Alex T Sia
Cochrane Database Syst Rev.
2018 May17;5(5):CD011344.
原文リンクはこちら。
安心と信頼のコクランレビューです!一緒に学んでいきましょう!
アブストラクト(一部本文より追加)
背景
- 硬膜外麻酔は産痛緩和に有効な手段で、従来、硬膜外カテーテルから持続注入で行われる
- PCEA(Patient Controlled Epidural Analgesia)を併用したりする
- 無痛分娩の麻酔の維持を、従来の持続投与(BI:Basal Infusion)の代わりに、自動強制ボーラス投与(AMB:Automated Mandatory Bolus)を行うことに関心がある
- BI:Basal Infusion
=CEI:Continuous Epidural Infusion - AMB:Automated Mandatory Bolus
=PIEB:Programmed Intermittent Epidural Bolus - 以下、それぞれ他の論文と同様にCEIとPIEBと一般的な呼称で表します
- PIEBとCEIの薬液投与時の注入圧の違いにより、麻酔効果の広がりに差が出ると言われている
- PIEBは鎮痛の向上と、母体満足度の向上をもたらす、と近年のRCTで言われている
目的と方法
PIEBの無痛分娩の麻酔の維持への効果を調査する
- 検索方法:2018年1月にいろいろ情報ソースを検索しスクリーニングした
- 選択基準:PIEBとCEIを比較しているRCTを選択した
- データ収集と分析:コクランのスタンダードの方法を使用した
コクラン的システマティックレビューです。
- 麻酔の介入を必要とするBTPのリスク
- 帝王切開のリスク
- 器械分娩のリスク
BTP( breakthrough pain):突発痛。麻酔で鎮痛が得られていても、それを超える痛み。医療スタッフによる薬剤追加ボーラスなどの介入が必要となる。
- 分娩時間
- 時間あたりの局所麻酔薬の使用量
- 母体満足度
- アプガースコア
結果
12の研究から合計1121人の女性を対象とした
麻酔の導入方法や使用薬物の種類にばらつきがあったが
研究全体のバイアスリスクは低かった
BTPが33%から20%に減少する
(from 33% to 20%; risk ratio (RR) 0.60; 95% confidence interval (CI) 0.39 to 0.92, 10 studies, 797 women, moderate-certainty evidence)
帝王切開率の頻度は15-16%で変わらない(有意差なし)
(15% and 16% respectively; RR 0.92; 95% CI 0.70 to 1.21, 11 studies, 1079 women, low-certainty evidence)
器械分娩の頻度は9-12%で変わらない(有意差なし)
(12% and 9% respectively; RR 0.75; 95% CI 0.54 to 1.06, 11 studies, 1079 women, low-certainty evidence)
BTPが減るってすごいよね!
平均分娩時間は変わらない(有意差なし)
(mean difference (MD) -10.38 min; 95% CI -26.73 to 5.96, 11 studies, 1079 women, moderate-certainty evidence)
局所麻酔薬の使用量が時間あたり1.08mg減少する
(MD -1.08 mg/h; 95% CI -1.78 to -0.38, 12 studies, 1121 women, moderate-certainty evidence)
母体の満足度が上昇する
(7件中5件の研究で示されたが、有意としなかった)
アプガースコアは変わらない(有意なし)
同等以上の効果が得られるなら、使う薬の量は少ない方がいいよね!
結論
- 無痛分娩の麻酔の維持についてPIEBとCEIは類似したアウトカムだった
- PIEBは局所麻酔薬の使用総量を減らす一方で、BTPを減らし、母体満足度を向上させる可能性がある
まとめ
BTPが減ることで、局麻の追加投与が減ります。
麻酔時間が長時間に及ぶこともあるので、局麻の総量は少ないほうが局所麻酔中毒のリスクが減っていいですね。
また、産婦さんが痛くてレスキューを求めることも減ります。
母体の満足度は上がりますし、対応するスタッフの負担も軽減します。
嫌なことは減って、良いことが増える!デメリットの指摘はなし!
PIEBはCEIの上位互換と考えていいでしょう!
あえてネックを挙げるとすると、
CADD®️-Solis PIB(スミスメディカル)や クーデック®️エイミーPCA(クーデック)がなければPIEBを行うことができないことでしょうか。
僕の施設では全例PIEB+PCEAで維持しています。
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
PIEBの仕組みを理解しておこう!
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