こんにちは、現役医師のこんどすです!
無痛分娩をすでに提供している、あるいはこれから無痛分娩を取り入れていきたいと思っているみなさんは
いろんな麻酔方法がある中で、いったいどの麻酔方法がベストなのか
と、疑問に思ったことはありませんか?
今回の記事を読めば、無痛分娩の最新でベストな麻酔法がわかります!
ちなみに麻酔方法が複数あることがイマイチわかないよって人は
下のメモを参考にしてください。
無痛分娩における麻酔方法は
導入方法と維持方法の2つに分けられていて
それらを組み合わせることになります。
硬膜外麻酔単独(EA)
脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)
Dural Puncture Epidural(DPE)
持続投与(CEI)
間欠ボーラス投与(PIEB)
+自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)の有無
PCEAの有無は別にすると
少なくとも導入×維持=3×2=6通りあります。
僕はDPE(Dural Puncture Epidural)で導入し、PIEB(Programmed Intermittent Epidural Bolus)で維持する方法がベストだと思っています。
今回紹介する2021年の論文もまさに同じ結論です。
DPEに関してはこちらの記事のも参考にしてみてください。
論文紹介記事のコンセプトについては第1回の記事をご確認ください。
今回紹介する論文はこちらです。
Effect of Dural Puncture Epidural Technique Combined With Programmed Intermittent Epidural Bolus on Labor Analgesia Onset and Maintenance: A Randomized Controlled Trial
DPEとPIEBの鎮痛のオンセットと維持についての効果:RCT
Yujie Song, Weijia Du, Shuangqiong Zhou, Yao Zhou, Yibing Yu, Zhendong Xu, Zhiqiang Liu
Anesth Analg. 2021 Apr 1;132(4):971-978.
原文リンクはこちら。
一緒に学んでいきましょう!
アブストラクト(一部本文より追加)
背景
- DPEは従来の硬膜外麻酔(今回はEP略す)よりオンセットが早いと言われている
- PIEBによる維持はCEIと比べて、薬液の使用量が少なく済む
- DPE+PIEBの組み合わせが、EPorDPE+CEIの組み合わせと比べて
鎮痛のオンセット、局麻使用量の低下、副作用に対してさらなる利益があるかどうかわかっていない
方法
VAS>50mmかつ子宮口開大<5cmの初産婦を3つの群にランダムに割り付けた
- EP+CEI
- DPE+CEI
- DPE+PIEB(←これが本命)
- DPEには25GWhitacre針を使用した
- 1.5%リドカイン3ml(アドレナリン15μg添加)でテストドーズ
- 導入は0.1%ロピバカイン(スフェンタニル0.3μg/ml)10mlを2分かけてトップアップ
- 維持は0.1%ロピバカイン(スフェンタニル0.3μg/ml)をCEIでは導入直後から8ml/h、PIEBでは導入1時間後に8ml/1時間毎
- PCEAは1回5ml ロックアウトタイム20分
- PCEAでカバーできないBTPは0.125%ロピバカイン5mlを追加投与
- トップアップの薬液投与終了時をゼロ時間とした
スフェンタニル0.3μg/mlは日本でいるフェンタニル2μg/mlとほぼ一緒だよ
- 鎮痛のオンセット
2回の連続した子宮収縮の間に、VAS≦30mmとなるまでの時間を“十分な鎮痛が得られるまでの時間=オンセット”とした
- VASスコア
- ロピバカインの総使用量
- 麻酔レベル(氷でチェック)
- PCEAのボーラス回数
- プロバイダーによる局麻の追加投与量
- 分娩様式
- 分娩時間
- modified Bromageスコア(0:ブロックなし→3:完全遮断)
- アプガースコア
- 副作用の発生率(母体低血圧、掻痒、嘔気・嘔吐、胎児徐脈)
- 麻酔に対する母体の満足度
結果
DPE+CEIはEP+CEIに比べて鎮痛オンセットが早かった
(hazard ratio= 1.705; 95% CI,1.039-2.800; P=.015)
DPE+PIEBはEP+CEIと比べて鎮痛オンセットは早かった
(hazard ratio= 1.774; 95% CI,1.070-2.941; P=.012)
鎮痛オンセットの中央値
- EP+CEI 10分(8-12分)
- DPE+CEI 8分(2-14分)
- DPE+PIEB 6分(3-9分)
鎮痛のオンセットが早くなるのはDPEの効果だよ
DPE+PIEB群は他の2群と比べてPCEAの回数とプロバイダーによる追加投与が少なかった(P<.001)
DPE+PIEB群は他の2群と比べて時間あたりのロピバカインの使用量と総使用量が最も少なかった(P<.001)
分娩時間(1期も2期も)、分娩様式(帝王切開率と器械分娩率)、Bromageスケール、アプガースコア、副作用の発生率、母体の満足度に関してはグループ間で差がなかった
ブロックの質について補足
- すべての群で麻酔レベルの高さはT10
- 導入30分後のS2ブロックはDPE群の方がEP群より多かった
- 片効きは有意差なしだが、DPE群の方がEP群より少なかった
PIEBで器械分娩が減ったり、分娩2期が短縮したりと、過剰な期待をしてしまいがち。ブロックの質がよくなるのは以前の論文でも紹介した通りDPEの効果だね!
結論
- DPEはEPに比べて鎮痛オンセットが早い
- DPE+PIEBは母児への副作用を増加させることなく、EP/DPE+CEIの2群より局麻の使用量を減少させた
まとめ
改めて整理すると
- DPEの効果で鎮痛のオンセットが早くなり、ブロックの質が向上する
- PIEBの効果で、局麻の総使用量や追加投与が減る
DPEは硬膜外麻酔単独の上位互換で、PIEBはCEIの上位互換というポジションです。
それぞれを組み合わせると、デメリットを増やすことなく、それぞれのメリットだけをより活かすことができます。
もちろん急いでいるときはCSEAを選ぶこともありますが
基本の麻酔方法としては
DPE×PIEBの組み合わせが最新のベストアンサーだと思います。
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
DPEとPIEBの仕組みを理解しておこう!