こんにちは、現役医師のこんどすです!
今回は、無痛分娩に関連する母体発熱についての記事です。
無痛分娩をしていると、産婦さんが徐々に発熱してきて、気づけば38℃を超えて寒気を訴えている
そんな経験はありませんか?
今回の論文では、無痛分娩中の母体発熱のメカニズムや児への影響について言及されています。
論文紹介の趣旨については第1回の記事をご確認ください。
今回紹介する論文はこちらです。
Labor epidural analgesia and maternal fever
硬膜外無痛分娩と母体発熱
Scott Segal
Anesth Analg. 2010 Dec;111(6):1467-75.
原文リンクはこちら。
硬膜外無痛分娩と母体発熱は関係がありそうだ。
炎症性の母体発熱は児のアウトカムに影響しそうだ。
という内容です。
では、さっそく確認していきましょう!
一緒に学んでいきましょう!
アブストラクト
硬膜外無痛分娩と発熱の関係性
- 硬膜外無痛分娩を受ける女性は、徐々に体温が上昇する傾向がある
- 硬膜外麻酔以外の麻酔法では見られない
- ただ、硬膜外無痛分娩を受ける人はもともと下記のような発熱リスクを有しているため選択バイアスがある
- 破水後の分娩時間が長い
- 分娩所要時間が長い
- 内診頻度が多い
- その他の医療介入が多い(アトニンの使用など)
- しかし、多くのRCTで関係性が指摘されている
まとめると、原因はさておき、硬麻外無痛分娩と母体発熱は関係がありそうだ
- 頻度は12の研究で1.6%〜46.3%と幅があるが、平均すると18.5%程度
- 麻酔開始後5時間から上昇することが多い
- 発熱するときは麻酔開始直後からすぐに時間あたり0.33℃上昇していく
- 頻度や体温上昇速度の報告は異なる
体温は必ず測ろうね
メカニズム
- 体温調節機能(硬膜外無痛分娩により熱放出が抑制?)
- オピオイドの影響(オピオイドの点滴投与で発熱抑制?)
- 炎症(絨毛膜羊膜炎?硬膜外麻酔による炎症?)
上記の、可能性がありそうだと言われているが、
現時点で、硬膜外無痛分娩に関連する発熱のメカニズムはわかっていない。
一般的には胎盤や膜に起こる炎症(絨毛膜羊膜炎)によることが多い。
結果
- 産科医と新生児科医で見解が異なる
- 母体の炎症性の発熱は新生児の脳障害に関連しそう
- 脳性麻痺
- 脳症
- 幼少期の学習障害
予防と治療
現在、硬膜外鎮痛関連発熱(epidural-associated fever)を抑える安全で効果的な方法はない
絨毛膜羊膜炎となどの感染が疑われる場合は抗菌薬の予防投与が有効と言われている
やれることをやるしかない!
まとめ
ここからは僕個人の意見です。
前提として
大規模なシステマチックレビューなど多くの研究で
硬膜外無痛分娩は新生児のアウトカムに影響しないと結論しています。
しかし、今回の論文のように、絨毛膜羊膜炎による発熱や現在証明されていない無痛分娩による炎症性の発熱がある場合は
新生児へアウトカムに影響する可能性があると認識しておく必要がありそうです。
また、感染が疑われる場合は抗菌薬の予防投与と、クーリングが重要です。
当院では、少なくとも1〜2時間毎の体温測定と、37.5℃を超えた時点でクーリングを開始しています。
以上、参考になればうれしいです!
ご意見、ご質問等などお気軽にコメント下さい😊
麻酔で感じにくい下半身をアイスノンでクーリングすると凍傷になりうるから、首や脇などにしましょう!
これまでに紹介した合併症についてはこちらも参考にしてみてください。